第5章:ありがとう、私のもとに来てくれて

36歳からの再スタート

出産予定日を過ぎても、まだ来ない

父が亡くなってから、お葬式や手続きでバタバタしていたけど、なんとか予定日までにやらなければいけないことは片付いた。

ひとまず安心して、10月から産休に入った私は、父のことや出産準備をしながら妊娠後期を駆け抜けていた。

思い返すと前回の妊娠で出産してると父とちゃんとしたお別れもできてなかっただろうな…

もしかして赤ちゃん空気を読んで戻ったのかもと考えていた。

きっと優しい子に違いないと思っていた。

予定日は11月8日。

そして翌日、11月9日――朝から検診があった。

昨晩からなんとなくお腹が痛い気がしたけど、「前駆陣痛かな?」と思いながら助産師さんに話すと「まだまだだねー」と言われた。

そっか、陣痛ってもっと痛いもんね。

赤ちゃん、まだ出てこないか。そう思いながら病院をあとにした。

ランチ中に、陣痛スタート

その後、旦那さんとランチしていると、どんどんお腹の痛みが増してきた。

最初は生理痛みたいな鈍い痛み。痛みが来るたびに顔が歪むようになってきた。

気がつくと、痛みの間隔が10分になっていた。

病院に連絡すると「入院しましょう」とのこと。ついに、その時が来た。

コロナ禍のため、面会も立ち会いも禁止。

旦那さんとは病院の入り口でバイバイして、私は一人、入院することになった。

痛みはまだまだ、でもひとりはつらい

「数時間後には赤ちゃんに会えるかも」

そんなふうに軽く考えていたけど、現実はそんなに甘くなかった。

子宮口はなかなか開かず、思うように進まない。

病室でひとり、陣痛に耐える時間が続いた。

でも、今思うとこのときの痛みなんてまだまだだったと思う。

妹とLINE電話していたし、旦那さんからのLINEにも返事できてたくらいだったから。

朝になっても、まだ産まれない

陣痛の合間に睡眠をとって、すでにクタクタな状態で朝を迎えた。

先生の内診中に破水。「これでもっと進むと思うよ!がんばって!」と励まされた私は、もう少しかなと楽観的に思っていたけれど、そこからがまた長かった。

赤ちゃんの姿勢が斜めでなかなか降りてこず、痛みにひたすら耐える時間が続いた。

ついに出産!ようこそ、私たちのもとへ

分娩台に上がると、さっき「見学したい」と言ってきた研修中の助産師さんが、しっかり取り上げポジションにいて参加していた(笑)。

「そういう意味だったのか」と、痛みの中で少し笑ってしまった。

陣痛のときよりはメンタル的に落ち着いていて、いきみながら少しずつ進んで――

11月10日15:34、男の子が誕生!

感動して泣くかと思ったけど、正直20時間の壮絶な戦いのあとの“ホッとした気持ち”が勝って、涙は出なかった。

コロナ禍の中でも、病院の配慮で旦那さんとテレビ電話で出産報告できたのはありがたかった。

旦那さんは照れながらも、すごく嬉しそうだった。

小さな命を抱いたときの涙

出産から1日後、息子を腕に抱いていると、ようやくじわじわと感動が押し寄せてきた。

「この子、本当に生まれてきてくれたんだ」

その瞬間、涙がこぼれた。

高齢出産。妊娠糖尿病。コロナ禍。父の死。

いろんな出来事を越えて、やっと会えたこの命。

今まで生きてきた38年間の中で、一番幸せな瞬間だった。

生まれてきてくれて、ありがとう。

私をママにしてくれてありがとう。

次回:産後の生活や育児のリアルをお届けします

コメント

タイトルとURLをコピーしました